Fly me to the moon

舞台の感想・おそらくほぼ宝塚

エリザベートのこと

*雑感

*特定のどれかの感想ではありません・・といいつつ2016宙エリザのコメントは最後に

 

 

エリザベート全体を通して最も美しく演出してあるのは「鏡の間」だと思う。シシィの美貌爆発、皇帝であるフランツをして「君を失うくらいなら信念もやぶろう」と言わせてしまうシシィの勝利宣言のように聞こえる「私だけに」。

 

それと対照的にラスト、死を受容したシシィは質素な身なりで死の前に立つ。表情は複雑で明確な感情を現さないように思う。

 

これ・・おそらく西洋の価値観では 鏡の間:偽りの美 ラスト:本当の美 と対極的に演出されてるんじゃないかなと思う。

 

 

ハプスブルク皇帝を自分に従わせてもなお、満たされないシシィ。自身の美貌の価値に気づいてからは、それが衰えないように、また他に知らないうちに自分より美人がいないかどうか探し回る。美貌を持っているがために、さらなる苦しみを得るシシィ。

 

シシィは何も持っていないわけではない。与えられてもなお満たされぬ何か、埋まらぬ飢えに苦しんでいる。

 

フランツは皇帝であるけれど、所詮地上の皇帝だ。地上は有限、過ぎ去る、通り過ぎる場所だ。

最後の審判」ののち、シシィは永遠に終わることのない安らぎを得る。それは偉大なる愛。

 

 

シシィはオレンジ3個とたまご2つしか召し上がらず。

他方フランツほか重臣たちはトリとサカナを頂いてしまう。

 

 

ハプスブルクの退廃ここに極まれり。

 

 

 

 

かちりかちりと、ピースが埋まるように実に繊細に組み合わさっていって、脳みそが非常に満足しました。

まず背景がうわぁーっと広がり、絵の具が落ちるように点々と要素が散らばって、最後に調和した全体。

 

もちろん見た回にもよるのかもしれない。ふわっとした魔法がかかって世紀末、ハプスブルクの終焉がそこに現出しました。褒めすぎかな。

そしてつくづくこの作品はむずかしいな。出演者のテンションがちょっと変わったら、多分全体はそっちに引っ張られてしまうだろう。でも多分そうじゃない、そうじゃないんだと思う・・

バラバラに行動しているように見えても、根底はつながっていて、呼応していないと多分全体のバランスが崩れてしまう。その呼応がエロティックだった。